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2005/04/14

『一方的な利益』判例(オンライン・ポーカーと法律)

●『一方的な利益』
・大審院大正6年4月30日・大審院刑事判決録23巻436頁「当事者の一方が危険を負担せず、常に利益を取得する組織の場合、賭博罪は成立しない。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)


 この判例は極めて重大な意味を持ちます。この判例が意味するところは、「参加者が必要経費以上の金銭を払わずに、勝負事の結果に応じて賞金を受け取ることは違法ではない。逆に言えば、企業などがすべての賞金を提供し、勝負事の結果に応じてその賞金を参加者に配分することは違法ではない」ということです。だからこそ、各種スポーツ及びゲームで「トーナメント・プロ」が存在できるわけです。
 企業がスポンサーとなって賞金が提供されるトーナメントが違法でないとするならば、オンライン・ポーカーのFreerollトーナメントや(こちらは無理があると思いますが)リアルな大会の参加権が与えられるようなトーナメントは、違法にならないと解釈できる可能性があります。

 ここでひとつの疑問が浮かびます。
 世間一般で行なわれている、参加費を集めてそれを賞金あるいは賞金の一部とするような大会は、違法ではないのだろうか、という点です。
 この点に関して指標となる出来事が過去にありました。その出来事は、2004年3月24日付けの朝日新聞東京朝刊に『マージャン大会に「待った」 参加費を賞金、警察庁「賭博の恐れ」』という記事で掲載されました。
 「さわやかカップ麻雀フェスティバル」と題されたその大会は、地方予選も行なわれる全国大会で、参加者から集める参加費と協賛団体が出す協賛金を賞金とし、優勝者には150万円が贈られる予定でした。しかし、警察庁の指導により、主催者は大会の中止を決定しました。
 警察庁の見解は以下の通りです。

---- 『朝日新聞 2004.03.24 東京朝刊 39頁』より引用 ----
 警察庁は、参加費の一部が賞金に充てられることから、参加費そのものが賭け金に当たると判断した。参加費が会場使用料など大会運営だけに使われ、賞金に充てない場合は賭博に当たらないという。
---- 引用ここまで ----
(記事検索には@nifty新聞・雑誌記事横断検索を利用しました)

 では、世間一般で行なわれている同様の大会は違法なのでしょうか。
 これに対する警察庁の見解は以下の通りです。

---- 『朝日新聞 2004.03.24 東京朝刊 39頁』より引用 ----
 囲碁や将棋、スポーツなどの分野でも参加費を集める全国大会が行われている。参加費を賞品購入に充てることもあり、今回の解釈を厳密に適用すればこれらも賭博にあたる可能性がある。だが警察庁は「社会通念に照らして判断するべきで、何もかも問題視するつもりはない」と説明する。
---- 引用ここまで ----

 「社会通念に照らして」という言葉は、とても便利です。でも、社会通念(「社会一般で受け容れられている常識または見解。良識。」)というのは「誰」の良識なのでしょうか。
 法律というものは、社会の秩序を保つためにあります。だから、その秩序を乱すものに対して罰を与える、というのも分かります。しかし、この社会に生きる人々の考えは様々で、良識は一通りではありません。参加費を賞金の一部に当てる大会について、「問題視されるゲーム」と「問題視されないゲームやスポーツ」の良識に照らし合わせた違いとは、一体何でしょうか。
 技術と運の要素のバランスでしょうか。では、技術の要素がどれくらいで、運の要素がどれくらいなら問題なのでしょうか。そして、その要素はどうやって計るのでしょうか。
 射幸心をあおるかどうかが異なる、とでもいうのでしょうか。「射幸心」とは、広辞苑第四版(CD-ROM版)によると「偶然の利益を労せずに得ようとする欲心。」とされています。問題視された麻雀は、そういう欲心を刺激するほど、努力せずに勝てる楽なゲームなのでしょうか。私は、様々なゲームを体験していますが、その中でも麻雀は、細かいルールが複雑で、そのルールを把握していないと使えない技術も多く、プレーしたことのない人には薦められない(面倒なので自分では教えたくないし、私もすべては把握できていません)ゲームです。

 もっと根本的なことを言えば、同じ競技で、同じように参加者を公開募集していても、スポンサーが用意した賞金をもらう大会は違法ではなくて、参加者で出し合った賞金をもらう大会は違法、という線引きそのものに説得力がありません。参加者の公平性と大会の透明性が保たれていて、技量の差が成績に影響を与えるものならば、賞金の出所はどこでもかまわないのではないでしょうか。それが、社会の秩序を乱すものとは思えません。むしろ、それを問題視するほうが「良識がない」ように思えます。

 社会通念に照らし合わせて、あるいは日本国憲法に照らし合わせて、問題視すべきは一体何であるのか、公式に議論すべきではないでしょうか。

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