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2005/04/21

『一方的な利益』余談(オンライン・ポーカーと法律)

 『一方的な利益』判例の余談です。


・大審院大正6年4月30日・大審院刑事判決録23巻436頁「当事者の一方が危険を負担せず、常に利益を取得する組織の場合、賭博罪は成立しない。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)


 この判例をうまく利用して、言い逃れをしたのが平成12年の新潟県警の不祥事です。

---- 『東京新聞 2000.02.27 朝刊 25頁 社会面』より引用 ----
 新潟県警本部長解任 局長との宴席に県警の5人参加 生安部長は麻雀も
 新潟の女性監禁事件で女性が保護された一月二十八日夜、新潟県三川村の旅館で、特別監察に訪れた関東管区警察局の中田好昭局長と飲食した新潟県警の幹部名が二十六日、関係者の話で明らかになった。
(中略)
 このうち中田局長や小林本部長、長谷川部長らが懇親会の後、マージャンに興じた。
---- 引用ここまで(記事検索には@nifty新聞・雑誌記事横断検索を利用しました) ----

 この事件の報告書を巡る国会での答弁は以下のとおりです。


●新潟県警察をめぐる事案に関する報告書
・「この調査報告書にも、マージャンにおきましては、満貫賞の景品として本部長が五百円の図書券二十枚を私費で購入、提供したということを認定しておりまして、本部長が購入をした図書券を満貫以上の役で上がった場合に景品として一枚が配られたとの報告を受けておりまして、そのように承知をしているところであります。(参議院会議録情報 第147回国会 法務委員会 第2号からの引用。中村敦夫公式サイトにも、同じ内容の新潟県警・雪見マージャン事件があります)」
・「マージャンは、満貫賞の景品として本部長が五百円の図書券二十枚を私費で購入、提供していて、その都度図書券一枚が配られているので、財物の得喪を争っていないことから、刑法百八十五条の賭博罪には該当しないものと考えられる。(第147回国会 法務委員会 第5号からの引用)」


 この言い逃れのポイントは、

1.景品は本部長の自腹である
2.賞金ではなく、図書券という景品である
3.勝負事の結果で景品が渡されたわけではない

といったところです。項3はあまりにも苦しい言い訳なので論外なのですが、項2については論点を巧みに誘導している、と考えられます。この問題を断片的に聞いた人は、こう思うはずです。「じゃあ、現金ではなく図書券なら違法ではないのか」と。
 これまでの内容から分かるように、この言い逃れの最大のポイントは項1です。これだけで、賭博罪は成立しないのです。項2を付け加えることで、現金を賭けていないことが論点であるかのような印象を与えておき、利益の取得が一方的であったことを既成事実として認めさせています。ずるいけど、巧妙な手口です。

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2005/04/19

オールイン 実在のギャンブラー

 先週の土曜日(4/16)から、NHK総合テレビで「オールイン 」という韓国ドラマが放映されています。放映時間は、毎週土曜日の午後11:10~午前0:10で、全24話です。
 すでに、BSで2回放映されているので、ご覧になった方もいるかと思いますが、タイトルの「オールイン」はポーカーで言うところのオールインです。NHKの公式サイトでは「オールインとはポーカー用語で、持ち金すべてを賭博につぎ込む状況のこと」と説明されていますが、あえて突っ込まないことにしておきます。
 NHKの公式サイトでは、また、「原作は、実在のギャンブラー、チャ・ミンスの波乱万丈の人生を描いた小説「ALL IN」(ノ・スンイル著)」と書かれており、ドラマでは、ラスベガスで撮影されたという、WSOPの決勝テーブルっぽい場面(なぜかゲームは7スタッドです)があります(第1話の冒頭と、第16話の冒頭)。念のため書いておきますが、ポーカーの場面はほとんどありません。微妙にギャンブラーの話でもありません。
 で、実在のギャンブラーということで調べてみました。ら、あっさり分かりました。

 英語名はJimmy Chaで、CardPlayer.comではこのような情報、The Hendon Mob Poker Databaseではこのような情報がありました。プロとして今でも活躍していることは分かりましたが、WSOPに関しては残念ながらブレスレットは獲得していないようです。
 いろいろ調べてみると、プロとして活躍しているのは、ポーカーだけではないことも分かりました。ポーカーと並んで有名なのが、囲碁のプロとしての顔です。富士通杯という世界囲碁選手権に、北米代表として出場しています(第2、3、8~10、12、13、15回)。

 さて、いろいろ調べたので、ブログに掲載してみましたが、誰かの役に立つのでしょうか。

【2005/4/26追加情報】  紹介しているサイトにチャ・ミンスとJimmy Chaが同一人物であるかどうかを示すものがなかったような気がするので、囲碁関連のGoBase.orgというサイトの情報を紹介しておきます。囲碁のほうは韓国でプレーした時代があるので両方の名前が資料として残っていますが、ポーカーのほうでは一貫して英語名を使用しているようです。
 ポーカーでは、ホールデムオマハ7スタッドと、何でもこなすプレーヤーのようですが、最近の記録では優勝したトーナメントはないようです。

 それから、初めて当ブログに来る人も多いようなので、NHK公式サイトの「オールインの説明」に突っ込んでおきます。
 オールインは、テーブル上にあるチップをすべてポットに入れる行為、であって全財産を賭博につぎ込むわけではありません。
 また、1話と16話で登場するWSOPの決勝っぽい場面は、トーナメントなので参加者は全員一律の金額でエントリーし、一定量のチップを受け取りトーナメントに参加します。
 トーナメントは持ちチップをすべて失ったものから抜けていく方式なので、負けるときには必ず「オールイン」することになります。逆に言うと、一度もオールインせずに優勝、という状況もありえます。

【2007/10/15追記】
 なんとなくリンクを見直しました。

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2005/04/14

『一方的な利益』判例(オンライン・ポーカーと法律)

●『一方的な利益』
・大審院大正6年4月30日・大審院刑事判決録23巻436頁「当事者の一方が危険を負担せず、常に利益を取得する組織の場合、賭博罪は成立しない。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)


 この判例は極めて重大な意味を持ちます。この判例が意味するところは、「参加者が必要経費以上の金銭を払わずに、勝負事の結果に応じて賞金を受け取ることは違法ではない。逆に言えば、企業などがすべての賞金を提供し、勝負事の結果に応じてその賞金を参加者に配分することは違法ではない」ということです。だからこそ、各種スポーツ及びゲームで「トーナメント・プロ」が存在できるわけです。
 企業がスポンサーとなって賞金が提供されるトーナメントが違法でないとするならば、オンライン・ポーカーのFreerollトーナメントや(こちらは無理があると思いますが)リアルな大会の参加権が与えられるようなトーナメントは、違法にならないと解釈できる可能性があります。

 ここでひとつの疑問が浮かびます。
 世間一般で行なわれている、参加費を集めてそれを賞金あるいは賞金の一部とするような大会は、違法ではないのだろうか、という点です。
 この点に関して指標となる出来事が過去にありました。その出来事は、2004年3月24日付けの朝日新聞東京朝刊に『マージャン大会に「待った」 参加費を賞金、警察庁「賭博の恐れ」』という記事で掲載されました。
 「さわやかカップ麻雀フェスティバル」と題されたその大会は、地方予選も行なわれる全国大会で、参加者から集める参加費と協賛団体が出す協賛金を賞金とし、優勝者には150万円が贈られる予定でした。しかし、警察庁の指導により、主催者は大会の中止を決定しました。
 警察庁の見解は以下の通りです。

---- 『朝日新聞 2004.03.24 東京朝刊 39頁』より引用 ----
 警察庁は、参加費の一部が賞金に充てられることから、参加費そのものが賭け金に当たると判断した。参加費が会場使用料など大会運営だけに使われ、賞金に充てない場合は賭博に当たらないという。
---- 引用ここまで ----
(記事検索には@nifty新聞・雑誌記事横断検索を利用しました)

 では、世間一般で行なわれている同様の大会は違法なのでしょうか。
 これに対する警察庁の見解は以下の通りです。

---- 『朝日新聞 2004.03.24 東京朝刊 39頁』より引用 ----
 囲碁や将棋、スポーツなどの分野でも参加費を集める全国大会が行われている。参加費を賞品購入に充てることもあり、今回の解釈を厳密に適用すればこれらも賭博にあたる可能性がある。だが警察庁は「社会通念に照らして判断するべきで、何もかも問題視するつもりはない」と説明する。
---- 引用ここまで ----

 「社会通念に照らして」という言葉は、とても便利です。でも、社会通念(「社会一般で受け容れられている常識または見解。良識。」)というのは「誰」の良識なのでしょうか。
 法律というものは、社会の秩序を保つためにあります。だから、その秩序を乱すものに対して罰を与える、というのも分かります。しかし、この社会に生きる人々の考えは様々で、良識は一通りではありません。参加費を賞金の一部に当てる大会について、「問題視されるゲーム」と「問題視されないゲームやスポーツ」の良識に照らし合わせた違いとは、一体何でしょうか。
 技術と運の要素のバランスでしょうか。では、技術の要素がどれくらいで、運の要素がどれくらいなら問題なのでしょうか。そして、その要素はどうやって計るのでしょうか。
 射幸心をあおるかどうかが異なる、とでもいうのでしょうか。「射幸心」とは、広辞苑第四版(CD-ROM版)によると「偶然の利益を労せずに得ようとする欲心。」とされています。問題視された麻雀は、そういう欲心を刺激するほど、努力せずに勝てる楽なゲームなのでしょうか。私は、様々なゲームを体験していますが、その中でも麻雀は、細かいルールが複雑で、そのルールを把握していないと使えない技術も多く、プレーしたことのない人には薦められない(面倒なので自分では教えたくないし、私もすべては把握できていません)ゲームです。

 もっと根本的なことを言えば、同じ競技で、同じように参加者を公開募集していても、スポンサーが用意した賞金をもらう大会は違法ではなくて、参加者で出し合った賞金をもらう大会は違法、という線引きそのものに説得力がありません。参加者の公平性と大会の透明性が保たれていて、技量の差が成績に影響を与えるものならば、賞金の出所はどこでもかまわないのではないでしょうか。それが、社会の秩序を乱すものとは思えません。むしろ、それを問題視するほうが「良識がない」ように思えます。

 社会通念に照らし合わせて、あるいは日本国憲法に照らし合わせて、問題視すべきは一体何であるのか、公式に議論すべきではないでしょうか。

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2005/04/13

『一時の娯楽に供する物』判例(オンライン・ポーカーと法律)

●『一時の娯楽に供する物』
・大審院大正13年2月9日・大審院刑事判例集3巻95頁「金銭はその性質上一時の娯楽に供する物ではない。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)
・大審院昭和4年2月18日法律新聞2970-9「一時の娯楽に供する物とは、関係者が即時娯楽のため消費するようなものをいう。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)
・大審院大正2年11月19日・大審院刑事判決録19巻1253頁「敗者に一時の娯楽に供する物の対価を負担させるために一定金額を支払わせた場合は、賭博罪を構成しない。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)


 「関係者が即時娯楽のため消費する」代表的なものは飲食です。判例によれば、例えば「今日の夕飯代を賭けてじゃんけんをする」というようなことは、賭博罪にはあたらないことになります。食事代を賭けて勝負事、といえば日本テレビ系列で放映されているぐるナイの企画ゴチになりますが思い出されますが、判例を拠り所とすれば合法ということになるのでしょう。でも、金額が大き過ぎるような気もします。このようなときに良く使われるのが「社会通念に照らし合わせて」です。
 「社会通念」とは、広辞苑第四版(CD-ROM版)によると「社会一般で受け容れられている常識または見解。良識。」とされています。かなり曖昧です。ゴチになります、の例だと、金額が非常識だと思う人の声が一般的だと思われれば、違法の可能性も生じます。
 また、社会通念は「一時の娯楽に供する物」の拡大解釈にも使用されます。その場で消費できなくても、それほど高価ではないものならばよいのではないか、という考え方です。例えば、ボールペンを持ち寄って麻雀をし、勝者がそのボールペンをすべてもらっても、それが違法だという人はいないでしょう。これが「図書券を持ち寄って」となると微妙なラインです。図書券は換金性が高いので、立件されると違法となる可能性が高いと推測されます。
 オンライン・ポーカーをリアル・マネーでプレーする場合は、購入した仮想チップを使用しています。その仮想チップは、社会通念に照らし合わせると、極めて換金性が高いと言えるので、違法と判断するのが妥当だと考えられます。

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2005/04/12

『偶然の輸贏(しゅえい)』他、判例(オンライン・ポーカーと法律)

●『偶然の輸贏(しゅえい)』
・大審院大正11年7月12日判決・大審院刑事判例集1巻377頁「「偶然の輸贏」とは、当事者にとって確実に予見したり、その意思により自由に支配できない事実に関して勝敗を決めることをいう。」(「新・判例コンメンタール 刑法5 罪(2)」三省堂)
・大審院大正3年10月7日・大審院刑事判決録20巻1816頁「賭博罪成立のためには、勝敗が主観的に不確定事実に係ることで足り、客観的に不確定であることを要しない。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)
・大審院昭和6年5月2日判決・大審院刑事判例集10巻197頁「麻雀の勝敗は技能・経験に左右されるが、主として偶然の事情に基づくから「偶然の輸贏」にあたる。」(「新・判例コンメンタール 刑法5 罪(2)」三省堂)
・大審院大正4年10月16日・大審院刑事判決録21巻1632頁「勝敗が単に技量のみにより決まらず、偶然の事情の影響を受けることがある囲碁についても、賭博罪は成立する。」(「判例六法 平成2年版」有斐閣)


 輸贏(しゅえい。ゆえい、とも読む)とは、広辞苑第四版(CD-ROM版)によると「(「輸」は負け、「贏」は勝ちの意) かちまけ。勝負。」とされています。
 賭博罪が成立するための、「偶然によるところの勝負事」に属する事柄は、客観性によらず主観的なもので足りるとされることから、かなり広範囲にわたります。ゲームなどの娯楽にとどまらず、スポーツや自然現象も含まれる、ということです。例えば、「明日の天気の予想」も偶然の輸贏となります。
 ゲームという一分野に限っていえば、判例を見ても分かるとおり、囲碁もその対象となっている点は重要かと思います。


●『財物を以て博戯又は賭事を為したる』
・大審院明治45年7月1日・大審院刑事判決録18巻947頁「本罪の成立にあたり、特質の目的である財物の数額は、当初から確定している必要はない」(「新・判例コンメンタール 刑法5 罪(2)」三省堂)
・大審院大正2年10月7日・大審院刑事判決録19巻989頁「本罪の成立にとって、賭博が博戯か賭事かを区別して判示する必要はない。」(「新・判例コンメンタール 刑法5 罪(2)」三省堂)


○単語の意味(広辞苑第四版より)
「財物(ざいぶつ)」…1.(ザイモツとも) 金銭と品物。金銭または品物。 2.主に刑法上用いられ、窃盗・強盗・詐欺など財産犯の客体となるもの。
「博戯(ばくぎ)」…博奕(ばくえき)の遊戯。ばくち。
「博奕(ばくえき)」…ばくち。
「博打・博奕(ばくち)」…(バクウチの約) 1.財物を賭け、骰子(さい)・花札・トランプなどを用いて勝負をあらそうこと。ばくえき。かりうち。とばく。 2.一か八(ばち)かのまぐれ当りをねらう行為。「大―を打つ」 3.「ばくちうち」に同じ。
「賭事(とじ)」…金品をかけて勝負すること。かけごと。

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